無題

朝7時起床。8時すぎ出発。駅に着いてみると、学ランの生徒が目に入った。かわいい。受験生かな。電車には、学ラン含め何人か高校生が乗っていた。良かった、ひとりじゃない。
安心しているうちに急行が止まる駅に到着。降りる高校生たち。さようなら学ラン…。皆さん受験生じゃなかったのですね。
新たに乗り込んできた人たちに目をやると、なんだかチャラチャラしている若者3人組を発見。どうやらD大(私が今から受けようとしている大学)の学生らしい。
「俺転部しようかなぁ。でも神学部しか行けないなぁ」
「全然就職できないみたいだな」
「今って就職氷河期らしいよ」
いやそれ結構前からだから。就職に興味ないのか?
「お前それ今始まった話じゃねぇよ。かなり前から言われてたろ」
おぉ良かった。わかってるやついるじゃん。
「そうだけど…」
「そろそろ頭うちするんじゃないかなぁ」
クソ、リア充め。お気楽なもんだな。内部進学だ。そうに違いない。
3人組が理不尽にも妬まれているうちに目的の駅に着いた。改札へと急ぐ人波をかき分け進む。あれ、制服の人ひとりもいないよ。どういうことなの。まさか試験日間違えた…?冷や汗が滲み、鼓動が早くなる。どうしよう。
「D大学の受験生はこちらでーす」
階段を上りきると、改札の向こうに看板を抱えた大学生らしき人が呼びかけているのが見えた。良かった!間違えてなかった!それにしてもこんなに大勢の人間がいるのに制服の人がいない。浪人生かな。それとも普通は制服着ていかないのかな。恥ずかしい。
もう帰っちゃおうかなと思い始めたとき、制服を着て歩いている生徒を見つけた。おぉ!仲間。これで一安心だ。あいつについていこう。
物件チラシ配りに忙しいアルバイトを横目にひたすら歩く。いつのまにかさっきの生徒の姿が見えなくなっていた。それにしてもアルバイト多すぎだろ。5メートルごとくらいに立ってるよ。そんなに下宿いらないって。
歩道橋を渡るころには制服姿もちらほら見えるようになった。駅からD大までは徒歩20分ほどかかる。それも坂道。家を出たのが何日ぶりかわからないほぼ引きこもりにはキツイ。
やっとの思いで大学に到着したとき気付いた。浪人生だと思っていた大半の人たちが大学生だってことに。いや、薄々気づいてたんだけどね。
大学生と別れて試験会場へと向かう。途中でチラチラと後ろを振り返る高校生がいた。ひょっとして一人は不安だから私と一緒に行きたいのかな。仕方ないなぁ一緒に行ってやるよ!
小走りで半径2メートルほどまで接近して何事もなかったかのように歩く。
「受験生の方は受験票を出してください」
はいはい、わかってますよ。カバンから受験票を取り出している間に高校生は行ってしまった。
案内看板を見てみる。試験会場は1階。行ってみると、模試で以前行ったことのある教室だった。3枚あるドアの内、せっかくだから真ん中の扉を選んでみた。開かなかった。仕方がないので別のドアから中に入ってみると、人がほとんどいなかった。全然制服を見かけないから、遅すぎたんだろうかと心配していたのは杞憂だったようだ。むしろ早すぎたらしい。
試験開始まで1時間ほどあったので、まったりしていると、教授っぽい男性が入ってきた。なんだろ。教授っぽい男性がマイクを片手に言った。
「〜線で人身事故がありましたので、試験開始時間を1時間遅らせます」
なんだって!?1時間も待たなきゃいけないの?だから人が少ないの?あなたは教授なの?
教授(面倒なので教授ということにした)は黒板にも同じ旨のことを書き始めた。字キレイだなぁ、家族にメールでもするかなとケータイをカチカチやっている間に人が増えていた。びっくり。
トイレに何度もいったり入口でつまずいたりしている内に開始時間が近づいてきた。指定された席に座り周りの人を眺める。1つの机に3人座るのだが、隣に座っている人が別の入試の時見かけた人に似ていた。流石に気のせいだと思う。ちなみに机を同じくするもう一人は、ブレザーの下に隠しながらケータイをしていた。いったい何やってたらそこまでして隠すはめになるんだよと考えさせられる隠しっぷりだった。




続くかもしれない。