極寒の地 朝一 音痴

「雪がどうして白いか知っていますか」
シロクマが話しかけてきた。僕はすぐに返事をすることが出来なかった。
「雪はとても小さく、光を乱反射するから白に見えるのです。では、どうして乱反射するのか」
「僕は」机の上に置かれた空っぽのコーヒーをちらりと見てから震える声で言った。「僕はいったいどうすれば良いのでしょう」
「人の話は最後まで聞きなさいと学校の先生に習わなかったのですか」
シロクマは尋ねた。表情に変化はなかったけれど、怒っているのかもしれない。
「ごめんなさい。でも、僕」
「でも、じゃないでしょう。話すときに否定から入るのは得策ではありません。全く、君の先生は何を教えたのですか」
君だって最後まで聞いていないじゃないか、と心の中で反論した。


朝一のコーヒーが僕はこの世の飲み物で一番好きだ。目が覚めて布団から出ようとしたところで、暖めたリンゴパイのような甘い香りが漂ってくることに気がついた。そうだ、ここは僕の家じゃない。
昨日の出来事の筈なのに、まるで遠い昔のことのよう



飽きた