感想

 「ピンク.と.グレー」を読みました。アイドルが書いたとのことで、水嶋さんの小説が話題になって読んだら案の定アレだったこともあり、そういう感じだろ、と思ってワクワクしながら図書館の予約が回ってくるのを待っていました。そして、ようやく回ってきたので、中をパラパラと見てみると、あら、以外と普通の小説じゃん、小説.すばる.新人賞獲れそう、と浅はかにもその内の二冊しか読んでいない賞を連想し、遂に読むにいたった本です。

 結論から言うと、とても面白かったです。多少の読みにくさはもちろんあったけれど、新人なんだから当然のことで、本当にこれなら新人賞を獲ってもおかしくないと思う。私は、エンターテインメントだか、純文学だか、この手のはそんなに読まなくて本当に面白そうなのしか読んでいないけれど、その他と比べて遜色ない作品です。よく考えたら本自体そんなに読まないし本当に面白そうなのしか読んでいないが、その話はまた別件にしましょう。

 さて、なぜわざわざ感想文をしたためているのかというと、愛とはなんぞ、もといBLとはなんぞ、ということに関する物事の整理がしたくなったからです。BLの何がそんなに我々を熱くさせているのか、は私にとって非常に大きな関心事の一つなわけですが、少なくとも私はBLの何に一番萌えるのかといえば、やっぱり気持ちなのだと思う。だから、エロければいいとかそういう即物的なものではなく、相手のことどう思い、どう思われ、どのような感情を持ち、どう気持ちが変化していくのか、に萌えを感じるのであって、その過程、あるいは到達点に存在するエロに魅力を感じるのではないだろうか。ではなぜ男同士なのか、と聞かれれば、やはり私が女だからじゃないかなあとしか言えないし、萌えってのは理屈じゃないのかもしれない。
 
 そんなわけで、事前の注意として、大なり小なりの曲解と妄想が混じっていることをここで補足しておきます。ちなみに、私は小説にしろ難にしろ、顧客がどう解釈するかは作者の意図するしないに関わらず自由であっていいと思う派であり、何の意味もこもっていないものを強引にこじつけて解釈するのが大好きです。
 そして、本書ですが、ものすごく質が良くて、甘さの一切ないBL小説でした。BL、という表現はちょっと違うのだけど、他に適当な単語が浮かばないので、便宜上そのように表記してみました。語彙力がなくてすいません。
 私が思う最高のBLの形がこれだ、と言っても過言ではありません。友達以上恋人以上の何か。オニアンコウの話なんかは完全に愛の告白でしたね。

 私は、よく恋愛とは何なのか考えていて(たぶんBLの影響)、結局のところ子孫を残すための本能行為、に行き着いてしまい、つまり男女間の恋愛ニアリーイコール性欲である、が今の暫定的な考えです。特に男性はそうなのかなあ、と思っています。『「アイ」とは.なんぞと問われれば それは「ワタシ」.と答えようぞ』、これは私の好きな曲の歌詞ですが、「愛」が「私」なんてよく言ったもので上手いなあと感心せざるを得ません。ごっちとりばちゃんは、君が僕で、僕が君ってことでしょう。彼らの間に存在するものは間違いなく『アイ』でつまり、『それは「ワタシ」』なのかもしれません。
 などと、意味のわからないことをツラツラと並び立てるのは(本当は悩みつつ、なのでツラツラではないのだけれど)、よい表現が見つからないからです。感想文なんて、畢竟気になったのならこの本を読んでみろ、としか言いようがないですよね。閑話休題、言い訳はさておき、これはまさしく愛です。いやあ、後世また読みたい本の一つにカウントしておこう。

 りばちゃん、ごっちのこと大好きですよね、これ。それが本当の愛だよ、と言ってあげたいね。この先きっと、俺ごっちのこと愛してたんだ、と実感する時がくるのかなと思っていたのに(途中で気づいてたのかも)、最後二人とも死んだのかな。永遠になったわけだ、素敵だなあ。ビターエンド好きの私にとっては至高のBLでした。恋人にならないところがいいんだよ、だって恋人の先には何もないから、BLの場合は、とは私の考えですが、彼らは紛れもなく恋人以上の存在だった、と私は思う。途中までは、少なくともりばちゃんはごっちを愛してると感じていたものの、ごっちがどう思っているかわからないと思っていましたが、最後のオニアンコウと遺書の件で確信した。両片思いです。両片思いかつ結ばれない、というのは萌えポイントだか切なポイントだか、何かそういうボタンをカチッと押すようなもので、あるいはじんわりと脳みそに浸透していくこの感情を表現する言葉を僕たちはまだ知らない。 

 長文になりましたが、最後に付け加えておきたい。タイトル厨の私としては、タイトルは「ファレ.ノプシス」にすべきだったと思う。最初、なんとなく綺麗でいいなと思い、読み終わった後もう一度見ると違った風に見える、そういうタイトルと装丁が私は大好きです。この本は、私の中では、タイトルはあんまりだけど装丁は百点満点です。
 それにしても、もっと評価されていいと思う。普通に面白かったからマスコミ的にはおいしくなかったのかな。それとも作者があまり有名じゃないのかな。私はジャニー.ズにもアイドルにもさほど詳しくありません。
 
読みやすいし、装丁も素晴らしいので気になった方はぜひ読んでください。


 作文がバカみたいに苦手なのに、BLに関することになると気合を入れまくる、それが腐女子です。